2005年度 Vol.53-No.1

2005年度<VOL.53 NO.1> 特集:日本のスタートアップス  

12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2005年度<VOL.53 NO.1>
特集:日本のスタートアップス日本における新産業創出の基盤整備が叫ばれて久しい。一時期のベンチャーブームは沈静化してはいるが、より実質的な新規事業創造が着実に進められ、1990年代に飛躍したベンチャー企業が日本の産業界の主役になりつつある。本特集では、各界においてスタートアップスの発展・興隆をリードしてきた第一人者を集め、新産業創出の主役であるベンチャービジネスやベンチャーキャピタルの現状を各方面から把握し、日本におけるスタートアップスの意義と展望について理論的、実証的に迫る。
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清成忠男
(法政大学学事顧問)
ベンチャー企業総論
 
  20世紀の最後の四半世紀の米国はまさにベンチャー企業の時代であった。 新しいベンチャー企業が次々に登場し、IT革命推進の担い手となっていった。 日本においては、ベンチャー企業論が提起されたのは1970年であったが、 1990年代に入ってからベンチャー企業の層はしだいに厚みを増している。 21世紀は工業社会から無形の知識が最重視される知識社会に移行する。 ここでは個人の役割がより重要になり、企業家活動が展開しやすくなる。
新しい知識を活用した次元の高いベンチャー企業がいっそう数多く登場するであろう。 本稿では、そうした新しい21世紀型ベンチャー企業の特徴を分析し、今後のあり方、そしていまだ十分ではない環境面や教育面での課題を提起する。
五十嵐伸吾
(九州大学ベンチャービジネスラボラトリー助教授)
日本のスタートアップスの現状
  1990年代半ばより、日本においても「ベンチャー企業の新興」に向けて、 さまざまな制度改革が行われ、起業をめぐる環境も急速に整備されてきている。 この10年で多数のスタートアップスの誕生を見るようになったが、 かつての松下やソニーのような大きな成功を収めるスタートアップスが 日本に誕生したとはいえない。 なぜ米国では誕生し、日本では誕生しないのであろうか。 新たな10年に向けて、「最も成長するスタートアップス」を目指していくための
起業家創出システムをわれわれはどのように作り出していけばよいだろうか。 本稿では、筆者の技術系スタートアップス支援という経験と内外の豊富な資料を用いて、スタートアップスの世界的な全体像を示し、起業家を育てる環境、ベンチャーの成功確率、ベンチャー・ファイナンスなど、日本のベンチャーを取り巻く現状を再確認する。
石黒憲彦
(経済産業省大臣官房総務課長)
日本におけるベンチャー政策の実態と展望
  ベンチャー企業の輩出とシリコンバレーのような起業家を育むネットワークとコミュニティ作りは、 経済産業省にとっては古くて新しいテーマであり、 通産省では、1960年代からベンチャービジネスの育成に取り組んできた。 その政策は、創業促進、中小企業活性化を目指す一般的なベンチャー振興策と、 産学連携、地域クラスターなど技術開発政策、地域政策といった テクノロジー・ベンチャー振興策の流れとに大きく分けることができる。 政府は、この40年間のうち、さまざまな方向からベンチャー振興策を打ってきたが、
特に1990年代半ばからの制度改革の流れは、ベンチャービジネスにとっての環境を整え、大きな成果をあげている。本稿では、ベンチャー政策に携わってきた筆者の政策立案の現場体験を交えて、日本におけるベンチャー政策の歴史的な流れ、実態と今後の展望について考察する。
宍戸善一;石井芳明
(成蹊大学法科大学院教授;経済産業省経済産業政策局産業組織課課長補佐)
新産業創造のための組織の創設
  日本版LLP(有限責任事業組合)・日本版LLC(合同会社)は、 構成員全員の有限責任を確保しながら、構成員間の関係の柔軟な調整が可能であり、 構成員課税のメリットを享受することが期待されている企業形態である。 従来の株式会社組織では、物的資本と人的資本という両者の拠出のうち、 権限・利益の分配において、物的資本のみが重視されたものであった。 2005年の第162通常国会に提出されている、この新しい企業形態の立法化は 人的資本が重要な意義を持つ共同事業のための新しい企業形態として、 日本におけるスタートアップスや新規事業展開の支援の制度的基盤として期待されている。本稿では、両組織の新産業創造における効用の法的根拠を説明し、内外にわたる豊富な事例をもとに、LLP・LLCの実践的な活用例を紹介する。
堀 義人
(グロービス・グループ代表)
ベンチャーキャピタリストに求められる要件
  ベンチャーキャピタリストに求められる能力や資質はどんなものであろうか。 筆者は1992年にグロービス・マネジメント・スクールをゼロから創業し、 96年にはグロービス・キャピタル・パートナーズを設立。 ベンチャーキャピタリストとして数多くのベンチャー企業に投資し、 育成するという業務を行っている。 本稿では、ベンチャーキャピタルの類型や業務プロセスについて整理し、 そのなかでも、マネジメント型ベンチャーキャピタルに焦点を当てて、 その意思決定と経営支援に求められる役割を分析していく。 ベンチャー企業の支援には、資金面ばかりでなく、人、ネットワーク、知恵など多岐にわたって提供することが重要である。起業家として、キャピタリストとしての両方の顔を持つ筆者の経験を踏まえて紹介する。
●ビジネス・ケース
藤原雅俊・武石 彰
(京都産業大学経営学部講師;一橋大学イノベーション研究センター教授)
花王:酵素入りコンパクト洗剤「アタック」の開発
  1987年に「スプーン一杯で驚きの白さ」と銘打たれて発売された
花王の酵素入りコンパクト洗剤「アタック」は、 それまで僅差で首位争いを繰り広げていた好敵手のライオンを 大きく引き離し、当時の日本の合成洗剤市場における勢力図を塗り替える 画期的な新商品であった。 花王は「アタック」をいかに開発・事業化していったのか。 1960年代末以降の日本の衣料用合成洗剤市場の動きや ライオン側の事情も追いながら、過去の蓄積と経験が
「アタック」の成功に結びついていった過程を明らかにする。
水野 学
(阪南大学経営情報学部専任講師)
関西スーパーマーケット:競争優位を生み出すノウハウ公開の可能性
  1959年創業の関西スーパーマーケットは、 阪神地区に根差した中小小売企業であるが、 今日多くのスーパーで使われているオペレーション方法を確立させた 優れたイノベーターとして知られている。 しかし、同社はこれらのノウハウを1社だけで独占せず、 ライバル企業に対して、積極的に公開してきた歴史を持っている。 経営学では、同業他社間の情報の「ギブ・アンド・テイク」の効果は 認められているが、関西スーパーのライバル企業への方針は、 単純な「ギブ・アンド・テイク」ではない。 ライバル企業への情報公開によって、どんな効果が出てくるのだろうか。また、自社の競争優位を揺るがすことにならないだろうか。本ケースでは、単純な「ギブ・アンド・テイク」という枠組みから離れ、ライバル企業間の情報交換、情報公開という問題を考え直す。
●連載:ブランディング・イン・チャイナ:中国消費市場におけるマーケティング戦略(6)
 矢作敏行 「「経済の暗黒大陸」の夜明け」
●コラム連載:もの造りと哲学(1)
 藤本隆宏 「高岡工場のアリストテレス」
●連載:経営学のイノベーションム
 長瀬勝彦 「意思決定のマネジメント(3):市場への参入とM&Aの意思決定」
●マネジメント・フォーラム
 折口雅博(グッドウィル・グループ会長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「人と人を結ぶビジネスを通じたサービスコングロマリットを目指します 」
●用語解説
 川島健司 「減損会計」

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