一橋ビジネスレビューの志
理論と実践をつなぐ唯一の架け橋として21世紀の経営学をリードする
『一橋ビジネスレビュー』の前身は、1953(昭和28)年に一橋大学商学部附属産業経営研究施設の学内機関誌として創刊された『ビジネスレビュー』であった。その後、日本企業の競争力が向上するに従い、欧米からの借り物の経営理論ではなく、日本発の理論的・実証的研究が時代の要請となった。1997年、産業経営研究施設がイノベーション研究センターに生まれ変わったのを契機に、この学内誌を全国的な経営学研究誌とすべく、2000年に東洋経済新報社と戦略的提携によって新創刊されたのが本誌である。その後、経営学を広く捉えイノベーション研究に係る学際領域を広く対象とし現在に到っている。
創刊にあたっての想いは、「日本発の理論的・実証的経営研究をオールジャパンの研究陣で発信する」であった。『ハーバード・ビジネスレビュー』がオールアメリカの経営専門誌であるように、「一橋」の名を冠していても本誌は、経営知力向上を目指す全ての人々に開かれたオールジャパンの専門誌である。そのことは、編集委員の顔ぶれからも理解されよう。ここでの一橋は単なる固有名詞ではなく、現実のビジネスと研究者の学界をつなぐ「唯一の架け橋」という意味が込められているのである。
21世紀はまさに経営の時代である。同じ産業に属していても、業績に際立った差が生じ、ローテク産業でも新しい技術やイノベーティブなアイデアを駆使すれば屈指の高収益企業に変身できる。さらに、地球温暖化や資源高騰に始まる世界規模の経営課題は、技術から経営効率に至るさまざまなイノベーション活動を要請している。しかし、その戦略的意思決定は、先進国に手本があるわけでも、政府が導いてくれるものでもない。自ら創造すべきものであり、所与の条件でさえも変革の対象として捉えるべきである。イノベーションを実現し生き残って行くことは国家も含め組織体の経営を担当する者があらゆる知識を総動員してしか実現しえないものなのである。
その意味で、経営の知的レベル(ビジネス・インテリジェンス)の向上が求められている。ビジネス・インテリジェンスには2つの意味がある。1つは情報収集能力であり、もう1つが知識創造にかかわる知的能力である。『一橋ビジネスレビュー』はまさに、2つ目の知識創造分野を支援することを目標にしている。
短期的な情報やノウハウものを提供するビジネス誌は毎日、毎週巷に絶え間なく発刊されている。それらに対し、本誌はあえて年4回の季刊発行を方針としている。読者に3カ月をかけて一冊の論文集をじっくりと読みこなしてほしいという想いからである。
『一橋ビジネスレビュー』創刊の志は高い。しかし、現実の運営にあってその想いが小さくなったり霞んだりするときがあるやもしれない。そのときは、オールジャパンの読者や研究者からの忌憚のない批判をお願いしたい。
『一橋ビジネスレビュー』編集委員会