(a)知識経営研究:
技術革新と経営革新を駆動するメカニズムを組織的な知識創造として捉え、その本質的な特徴を知識創造プロセスのマネジメントという視点から理論化
(b)技術革新研究:
技術革新のプロセスの実証的な解明。例えば大学や企業の研究所で生み出された新しい知見がどのように具現化していくのかなどの問題を考察
(c)経営革新研究:
新しい組織構造や経営手法などがいかにして生み出されていくか、またさらに柔軟性が失われた大規模企業が組織の枠組みや文化を自己革新していくプロセスなどを実証的に考察
(d)革新者研究:
技術革新や経営革新を遂行する革新者のパーソナリティやキャリアの特徴を研究
(e)経営史研究:
経営革新のプロセスを歴史的に解明し、いかなる経営革新がどのようなタイミングでいかにして遂行されたかを分析
(f)技術史研究:
技術のたどる進化の歴史的プロセスを解明し特定の技術革新が生まれた歴史的背景やその技術革新がその後の経済発展に及ぼした影響を分析
(g)ネットワーク研究:
どのようなネットワーク(企業間、企業と大学など)のもとでイノベーションが生まれるのかそこで生み出されたイノベーションがネットワークをどのように変化させるのか、などを分析
(h)イノベーション制度研究:
資金調達の仕組みやリスク分散のための諸制度、会計制度、法制度などどのような制度がどのようなタイプのイノベーションを創造するか、またイノベーションによって制度はどのように変容するかを研究
(i)国際比較研究:
イノベーションに関わる諸活動、組織、制度を国際比較の視点から実証分析
各研究領域の関係
イノベーションの研究でまず大切なことは、現実のイノベーションの実態を詳細に把握した上で、いかなる要因がイノベーションを促進しているのかを実証的に明らかにすることです【(b)技術革新研究/(c)経営革新研究】。
イノベーションの実態をより深く掘り下げて行くためには、遂行主体である革新者の特徴を実証的に把握する研究も重要になることはいうまでもありません【(d)革新者研究】。
また、イノベーション活動を行う主体間(個人・企業・大学など)のつながりやネットワークに関する分析は、社会プロセスとしてのイノベーションの実証分析ではかかすことができません【(g)ネットワーク研究】。
これらの実証研究をより大きな視野で位置づけていくためには、背後にある歴史的コンテクスト(事情)を理解し、イノベーションの発展プロセスを経時的に追求する研究分野も必要になります【(e)経営史研究)/(f)技術史研究】。
知的所有権といった法制度や、その他金融・会計制度などイノベーションの生成に関わるインフラストラクチャーの把握を進める研究分野【(h)イノベーション制度研究】も不可欠です。
以上の実証研究は、知識創造活動としてのイノベーションをとらえる理論的視座から統一的にまとめあげるのが、【(a)知識経営研究】なのです。これらの研究はすべて日本内部に限らず世界各国での現象にも目を向けて行われます。また、具体的に国際的な比較実証研究を行う分野も独立に設定されています【(i)国際比較研究】。