2002年度 Vol.50-No.3

2002年度<VOL.50 NO.3> 特集:消費者理解のマーケティング

12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

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2002年度<VOL.50 NO.3>
特集:消費者理解のマーケティング「消費不況」が叫ばれるなか、「消費者は今何を求めているのか」という問いが今ほど深刻に問われる時代はない。ただ、消費行動とは、本来非常に多面的かつ複雑なものである。ルイ・ヴィトンに代表される高級ブランド品が飛ぶように売れる一方、100円ショップなどの価格訴求型ビジネスへの需要も根強い。本特集では、マーケティング研究・消費者行動分析において培われてきた概念や理論を踏まえつつ、さらにインターネットの普及の影響といった今日的問題を取り上げることで、多様・多面的な消費者行動をどう説明・分析し、新しい消費者ニーズの把握と実現に結びつけるのかを考える。
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南 知惠子
(神戸大学大学院経営学研究科助教授)
象徴的消費を理解する — 消費行動への新たなパースペクティブと方法論的挑戦
  消費者はなぜ特定のブランドを選ぶのか。その答えは、経済的な効用の概念や予算制約による購買行動の説明、あるいは消費者内面の購買意思決定プロセスの理解だけでは見えてこない。固有の社会・文化的背景の下で、そのブランド選択に消費者がどんな意味づけをしているのかという、象徴的消費についての理解を深める必要がある。本稿は、象徴的消費行動と呼ばれる研究領域に注目し、消費の仕方それ自体と、消費者の属する社会との関連を示すことで現代的な消費者市場を理解するうえで重要な視点を提供する。
清水 聰
(明治学院大学経済学部経営学科教授)
消費者の意思決定プロセスとマーケティング戦略
  消費者の購買結果を示す購買履歴データの収集分析は企業のマーケティングにとって有効なツールであるが、「なぜその商品・ブランドを選んだのか」という購買の意思決定に至るプロセスの理解が戦略的にはより重要な意味を持つ。消費者の意思決定プロセスの研究の歴史を振り返りつつ現代の主流になっている情報処理型の意思決定プロセスを解説、その考え方を実際のマーケティング戦略に生かした事例として「小型車」「RV・ワゴン車」「高級車」という3つにセグメントした自動車市場の調査分析結果を紹介する。
上田隆穂
(学習院大学経済学部教授)
プライシングへの消費者心理を理解する
  プライシング(価格の設定)はマーケティングの最も基本的なツールの1つだが、効果的なプライシング方法はそれほど単純ではない。特に消費財に関しては、価格に対して消費者の心理的な要因が大きく働くからである。消費者は価格に対してどういった判断基準を持つのか、高価格でも購入する消費者の心理はどう説明されるのか、消費が行われる状況と価格にはどんな関係があるのか……。価格に関する消費者心理に焦点を当て、より戦略的なプライシングのあり方を考える。
丸岡吉人 
((株)電通アカウント・プランニング計画局プロジェクト推進部長)
手段目的連鎖モデルで消費者を理解する
  消費者行動のメカニズムを説明し、将来の行動を予測し、さらにそれをコントロールすることでマーケティング投資の効率を高めることが、消費者理解の目的である。ここでは、消費者の意思決定メカニズムを説明するための効果的なフレームワークとして、手段目的連鎖モデルを紹介する。さらに、消費者の手段目的連鎖による価値意識とブランドや商品の結びつきを知る手段として、ラダリング法という手法を用いた調査・分析の手順を概説し、それを商品設計、広告戦略などのマーケティング実務にいかに活かすかを、事例をもとに考える。
濱岡 豊
(慶應義塾大学商学部助教授)
創造しコミュニケーションする消費者、「アクティブ・コンシューマー」を理解する??共進化マーケティング論の構築に向けて
  消費者による開発・創造は、消費者行動の定義からも除外され、消費者行動、マーケティング研究では、ほとんど扱われてこなかった。しかし、Linuxなどのオープンソース・ソフトウエアの開発に見られるように、消費者による開発は無視できない現象となっている。「既存の製品・サービスを修正する(製品修正)」「新しい製品・サービスをつくる(製品創造)」「新しい用途を発見する(用途創造)」といった「創造的消費」を行い、他者と「コミュニケーション」する能動的な消費者について、筆者は「アクティブ・コンシューマー」と定義した。この新しい消費者像について、首都圏の720名を対象とした調査結果を紹介する。さらに、創造する消費者を前提とした、新しい時代の「共進化マーケティング」を紹介する。
片平秀貴
(東京大学大学院経済学研究科教授)
山本 晶
(東京大学大学院経済学研究科博士課程)
Net or Die : 新しい消費者が迫る新しい企業モデル
  
  インターネットの急速な普及は消費者の意識や行動に多大な変化を引き起こしつつある。消費者は、企業と社会に対し発言・発信力を高め、企業とブランドの「志」を問い、自らが顧客としてどう認識されているかに敏感になった。こうした変化に対応するために、企業には「顧客と対話し顧客から学ぶ力」「ビジョンをつくり発信する力」「顧客をもてなす力」が要求されはじめている。それらはウェブサイト上での対応にとどまらず、オフラインでの企業のあり方そのものを問う問題である。インターネットを介して生まれつつある企業と消費者の新しい関係をもとに、求められる新しい企業モデルについて論じる。
●ビジネス・ケース
藤原雅俊
(一橋大学大学院商学研究科博士課程)
キリンビール:「キリンラガー」の生ビール化と戦略策定の落とし穴
  1980年代までビール市場の圧倒的シェアを誇ったキリンビールは、アサヒビールの「スーパードライ」の登場以降大幅なシェア縮小とビール事業の収益力低下に直面している。その背景には、主力ブランド「キリンラガー」の生ビール化という商品政策、マーケティング上の戦略的失敗があった。キリンビールはなぜ、アサヒビールの攻勢を阻止できなかったのか。なぜ、主力ブランドの顧客層を見誤ってしまったのか。なぜ「キリンラガー」を生ビール化してしまったのか。戦略策定の落とし穴はどこにあったのだろうか。キリンビールの失敗から読み取るべき教訓を考える。
竹田陽子・米山茂美
(横浜国立大学大学院環境情報研究院助教授;武蔵大学経済学部助教授)
セルベッサ:ニユートーキヨーの食材発注システムはなぜ公開されたのか
  Linuxの登場以来、ソースコードを公開したオープンソース・ソフトウェアが世界的な広がりを見せているが、外食チェーン大手のニユートーキヨーは、自ら開発した業務用アプリケーション・ソフトを公開し、注目を集めている。「セルベッサ」と名づけられたこの食材発注システムは、資本関係のない競合外食チェーン3社に採用され、いくつかの課題を抱えながらも、運用を通じて機能の追加・改良が進んでいる。こうした業務用ソフトのオープンソース化は他業界にも波及する一大トレンドになるのだろうか。情報システム業界のビジネスモデルにどんな影響をもたらすのだろうか。「セルベッサ」の事例をもとに、その可能性と限界を考える。
●連載:経営学のイノベーション
 高橋 潔・金井壽宏 「元気の出る経営行動科学(5)職務満足と組織コミットメントから見る職場の幸福論」
 加賀谷哲之・伊藤邦雄 「企業価値経営論(5)」
●連載:産業レポート
 佐藤 淳 「カーナビゲーション」
●コラム連載:知のモノローグ
 野中郁次郎 「「理想主義的プラグマティズム」のすすめ」
●マネジメント・フォーラム
 桑野幸徳(三洋電機(株)代表取締役社長兼COO)
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「「マーケットナンバーワン」を目指す経営」
●投稿論文
 真鍋誠司・延岡健太郎 「ネットワーク信頼の構築 — トヨタ自動車の組織間学習システム」
●用語解説
 沢登秀明 「CRM」

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