2002年度<VOL.50 NO.4> 特集:交渉の理論と実践
12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社
2002年度<VOL.50 NO.4> |
特集:交渉の理論と実践経済活動に限らず、国際関係から家庭内のやりとりまで、社会生活の様々な場面で日々交渉が行われている。いずれの場面においても、満足のいく結果を導くためには、優れた交渉力が欠かせない。本特集では、主に米国で確立された交渉論という研究領域の基本的な構造と考え方を実務上の意味合いや事例を交えて紹介するとともに、日本という異なる文化背景のなかで、それをどう捉えるべきかを考察する。 詳細内容はこちら |
阿久津聡 (一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授) |
交渉者のマインドセットと交渉力 — 交渉のメンタリティ理論 |
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「彼を知り、己を知れば、百戦殆からず」という孫子の洞察は、交渉においても当てはまる。しかし、交渉相手はおろか、自分のこともなかなか分からないのが現実ではないだろうか。また、自分を知れば知るほど、その交渉スキルの未熟さが目について、交渉から逃げ出したくなることもあるだろう。交渉論とは、「己を知り、敵を知り、そして己を鍛える」方法の体系である。本稿では、交渉者のマインドセットやメンタリティに焦点を当てつつ交渉論研究を支える4つの大きな流れを俯瞰する。 |
鈴木一功 (中央大学専門大学院国際会計研究科[アカウンティングスクール]教授) |
ゲーム理論に学ぶ交渉分析のポイント — 企業買収交渉を事例として |
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交渉はビジネスの現場で最も日常的に行われている活動でありながら、いまだに経験と勘が支配する領域である。本稿では、交渉において自分が置かれている状況を冷静に分析し、より有利な交渉をするための客観的分析のフレームワークとしてゲーム理論を取り上げる。さらに、筆者の経験を基にした企業の合併における交渉の具体的事例に基づき、ゲーム理論的に交渉状況を分析するための考え方とプロセスを説明し、実務で活用するうえで留意するポイントを明らかにする。 |
木嶋恭一 (東京工業大学大学院社会理工学研究科教授) |
交渉のモデル分析:ネゴシエーションとコミュニケーション |
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日本語の「交渉」の意味は幅広いが、ネゴシエーションとコミュニケーションの2つの側面に分けられる。本稿では、交渉のプロセスをより深く理解するため、ネゴシエーションとコミュニケーションそれぞれにおける相互作用の構築プロセスモデルに主眼を置いた最新の数理モデルを紹介し、これに基づく洞察を検討する。 |
奥村哲史 (滋賀大学経済学部助教授) |
異文化交渉:ジョイント・ゲインと文化スキーマ |
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「日本人は交渉が下手だ」とはよくいわれるが、ほんとうにそうなのだろうか。日本人同士の交渉と、米国人同士の交渉ではその交渉結果の良し悪しにどんな差があるのか。国際交渉の場合ではその結果はどうなのか。もし差があるとすれば、どんな文化的な違いが影響しているのだろうか。異文化交渉の実証的研究の蓄積をもとに、日本人の交渉力の実態を探り、そのスキル向上の可能性を考える。 |
榊 博文 (慶應義塾大学文学部教授・慶應義塾大学大学院社会学研究科教授) |
交渉に役立つ説得のテクニック — 個人のスキルとしての交渉力 |
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日本人の多くは元来、交渉下手な要素が強いといわれるが、社会心理学の分野で発見・開発されてきた説得・交渉のテクニックを学習・訓練することで、個人対個人、企業対企業の交渉力の向上を期待できる。数多くのこうしたテクニックの中から、現実のビジネス交渉の場に適用しやすいいくつかの具体的手法をその学術的裏づけとともに紹介する。 |
茅野みつる (伊藤忠商事株式会社コーポレート・カウンセル) |
実務のなかでの交渉力 — 契約交渉における5つの鍵 |
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ビジネスにおける交渉力とは、当事者が満足する内容の契約締結を導き出す交渉能力と定義できる。契約交渉の成功は、交渉過程を始めから終わりまで一貫したプロセスと見なし自らに有利なようにマネージし、コントロールする能力にかかっている。そのための鍵となるのは、①交渉前段階で自らのボトム・ラインを認識する、 ②交渉初期段階において交渉の枠組みの合意を得る、 ③相手方に関する情報を収集する、 ④基礎を固めながら交渉し、最終争点は決裁者に任せる、 ⑤モメンタムを失わない、の5点である。本稿では、この5つのポイントについて事例を交えながら具体的に論じる。 |
●特別寄稿 井上 忠 (ジャパンゴアテックス株式会社代表取締役社長) |
ジャパンゴアテックスの組織コンセプト:恒久的に生き続ける生命体組織“POGAL” |
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日米の合弁企業ジャパンゴアテックスでは、企業を1つの生命体とみなすことによって考え出された POGAL(「グループとリーダーに基づくプロジェクト型組織」)という組織コンセプトを企業活動全般のよりどころとしている。 POGALは、人間のように考え行動する生命体をモデルとして組織を編成し機能させること、そして組織自体に自己変革を遂げる仕組みを内在させることという2つの発想に基づき、知識創造活動に主眼を置いた試みでもある。 POGALの概念と具体的なプロジェクト運営の手法を紹介する。 |
●ビジネス・ケース 小野善生 (神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程) |
エーザイ:アルツハイマー型痴呆症治療薬の開発プロセスと組織マネジメント |
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エーザイの開発した新薬、アルツハイマー型痴呆症治療薬「アリセプト」は 1997年米国、1999年日本で発売されて以来、同社の主力商品の1つとなっている。この新薬が実現するまでの過程では、組織の活性化や効果的なチームの編成、そして推進役となるチーム・リーダーの役割など組織のマネジメントがうまく機能したという点が指摘できる。不確実性の高い創薬プロセスを成功に結びつけるための条件とは何か。「アリセプト」の基礎となる化合物を発見した探索研究チームに焦点を当て新薬開発のプロセスを考察する。 |
清水 洋 (ノースウェスタン大学大学院歴史学部博士課程) |
茨城県東海村臨界事故:組織の危機管理 |
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1999年秋、茨城県東海村の原発燃料用原料加工会社JCOで発生した臨界事故は国内では過去最悪の原子力事故であり、日本の原子力開発史上初めて2人の被曝死亡者を出す惨事となった。正規の手法から逸脱した違法な作業手順が事故の直接原因とされるが、この不測の事態の発生に対し、JCOとその親会社の住友金属鉱山、東海村役場、茨城県庁、科学技術庁(当時)、政府対策本部などの関係組織では、それぞれ迅速な状況判断と対応が求められた。この臨界事故の教訓をもとに、組織としての危機管理のあり方を問う。 |
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![](http://www.iir.hit-u.ac.jp/iir-w3/img/spacer.gif) |
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●連載:経営学のイノベーション |
金井壽宏・高橋 潔 「元気の出る経営行動科学(6)成果を意識した経営行動科学」 |
中野 誠・蜂谷豊彦 「戦略ファイナンスへの招待(1)ファイナンスから見た多角化経営」 |
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●投稿論文 |
伊藤宗彦 「システム・アーキテクチャとイノベーション — カーナビにおけるソフトとハードの統合」 |
●第2回ポーター賞 |
大薗恵美 「受賞企業から学ぶ」 |
●コラム連載:知のモノローグ |
野中郁次郎 「経営を知に還元すれば「組織」と「戦略」は綜合化できる」 |
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●マネジメント・フォーラム |
ティモシー・C・コリンズ(リップルウッド・ホールディングズCEO: インタビュアー・米倉誠一郎 「もう「ハゲタカ」とは呼ばせない」 |
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●用語解説 |
永田晃也 「職務発明」 |
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