2002年度 Vol.50-No.2

2002年度<VOL.50 NO.2> 
  特集:マネジメント・プロフェッショナルズ ──日本における経営知識

12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

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2002年度<VOL.50 NO.2>
特集:マネジメント・プロフェッショナルズ ──日本における経営知識日本では、欧米とは異なる経営知識の形成がなされてきた。そのことが、日本企業の強さの源泉となった時期はあったものの、近年はむしろその機能低下が目立つ。企業経営者、経営コンサルタント、教育・研究者などに代表される「マネジメントのプロフェッショナル」たちを担い手・媒介として、日本における経営知識はどのように形成・伝播・蓄積されてきたのか。どこに問題があったのか。その検証を通じて、新たな知識創造のメカニズムを提言します。
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マティアス・キッピング
(ポンペウ・ファブラ大学経済経営学部准教授)
日本のコンサルティング市場の発展はなぜ後れたのか
— 経営コンサルティング産業の進化と国際比較
  日本における経営コンサルティング産業は1990年代以降、急速な拡大を見せたが、その本格的な定着は他の先進国市場に比べかなり遅いものだった。日本では社内や企業グループ単位での教育研修制度などコンサルティング機能に代替する経営知識伝播のシステムが存在したことがその背景にある。ただ、景気後退によるリストラクチャリングの必要性とグローバリゼーションの進展により、日本でも社外の専門集団としてのコンサルティング会社への依存度が高まりつつある。経営コンサルティングという世界的な一大産業の進化の歴史を追いながらいまだ発展途上にある日本市場の特徴を描き出す。
佐々木 聡
(明治大学経営学部教授)
戦後日本のマネジメント手法の導入
  科学的生産管理技術に代表されるアメリカ流のマネジメント手法は国内産業界における戦前からの経験や能力の蓄積を背景に、戦後、GHQの指導をきっかけに急速な導入・浸透が図られた。そうした新しい経営知識の普及の担い手となったのが、デミング賞を擁した日科技連であり、アメリカ政府や国内政財界の支援を後ろ盾とした日本生産性本部であった。戦後の一時期、生産性向上への取組みが産業界挙げての「運動」にまでなったプロセスをたどり、その後、企業間競争激化のなかでその運動がどう変容したかを検証する。
守島基博
(一橋大学大学院商学研究科教授)
ホワイトカラーの人材育成とマネジメント能力
  人材育成は経営知識の共有化のためのメカニズムである。しかし、日本企業のホワイトカラー人材育成は業務遂行能力の向上に比重が置かれてきた結果、企業競争力上重要なマネジメント能力の育成に後れが目立つ。これまでのホワイトカラーにおける経営知識の共有・獲得の手段としての人材育成のあり方を見直し、理論的な視点から整理を行うとともにデータ検証を試みる。さらに、ホワイトカラーの能力育成システムの有効性を決定する、(1)必要な人材像の明確化、(2)上層マネジメント候補の選抜育成における工夫、(3)キャリアにおける経験の「縦」の幅の広さ、という3要因を軸に、将来のホワイトカラー人材育成の方向を描く。
藤村修三
(一橋大学イノベーション研究センター・藤原洋ベンチャーファイナンス寄附研究部門教授)
研究開発における知識創造力 — 日本の技術創造システムの問題点
  科学技術振興、研究開発強化は国家の重点課題の1つに位置づけられてきた。欧米からの「技術ただ乗り」批判に応えるようにいわゆる「基礎研究」の強化が叫ばれた時期もあったが、景気低迷の中、近年の企業の研究姿勢はより製品に近い短期の「応用・開発研究」にシフトしてきている。その結果、次世代のイノベーションの核となるべき技術的科学的な知識創造力の低下が懸念される。半導体製造プロセスの研究開発における実体験を踏まえつつ日本の技術創造システムの問題点を指摘する。
楠木 建
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授)
日本のビジネススクールの戦略 — どこを標準化し、どこを差別化するか
  日本でもようやく本格的なビジネススクール教育が必要とされる時代となった。歴史と規模で圧倒的に先行する欧米のビジネススクールに対し発展途上にある日本のビジネ
ススクールにとって重要なのは、単なる後追いではなく、どこを「標準化」し、どこを「差別化」するかの見極めである。基本的な教育ツールや支援インフラについては欧米流のスタンダードにあわせる努力が必要だが、肝心の教育コンテンツ、コンテクストについては、日本的経営の特徴を踏まえた日本発の新しい知的価値の付加による「差別化」が不可欠となる。一橋大学ICSの取組みに照らし合わせつつ、萌芽期にある日本のビジネススクールの戦略を考える。
堀 新太郎
(ベイン・アンド・カンパニー ディレクター/北アジア代表)
日本におけるコンサルタントの役割と変化
  過去数十年、順調に成長を続けて巨大化したコンサルティング業界が今、世界的に構造変化の時期を迎えている。同業他社の後追い型、業務下請け型のコンサルティング需要は縮退する一方、企業の未知なる課題に対して問題解決手段を提供する本来のコンサルティングへの潜在的需要は増大している。欧米に比べ市場が小さく、限定的分野に活用されがちであった。日本のコンサルティングファームにとって、このトレンドはむしろ朗報である。だが、グローバルなスキルと経験を持ち、日本企業に関する十分な知見を持った優秀なコンサルタントの層が極めて薄いという、日本固有の問題もある。日本におけるコンサルティング業界の変遷を振り返りつつ、今求められるその役割と機能について考察する。
●特別寄稿
常盤文克
(花王(株)前社長・前会長)
企業を動かす力「黙の知」の役割と意義
●ビジネス・ケース
藤原雅俊
(一橋大学大学院商学研究科博士課程)
セイコーエプソン:プリンター事業の技術戦略
  国内のインクジェットプリンターメーカーでは、過去十数年にわたりセイコーエプソンとキヤノンが技術開発競争を伴った壮絶なシェア争いを繰り広げている。東京オリンピック終了後いち早くプリンター事業に力を入れ 1980年代までは優位な地位に立っていたセイコーエプソンだが、 1990年代に入ると、その立場は逆転。 1997年に再逆転を果たすまでには、潜在性は高いものの技術的不確実性が大きいインク吐出方式をあえて中核に据え、精密機械加工技術の駆使により低コスト化、小型化を実現するという独自の取組みが功を奏している。その技術戦略上の特徴と、成功要因を考える。
山下裕子/古川一郎・小川 進
(一橋大学大学院商学研究科助教授;一橋大学大学院商学研究科教授;神戸大学大学院経営学研究科助教授)
エレファントデザイン/エンジン:消費者参加型の商品開発ビジネスモデルの可能性
  インターネットやコンピュータグラフィック技術の進化・普及により消費者コミュニティから生の声を吸い上げたアイデアをもとに、既存の流通チャネルには流れにくいような新しい商品を開発・販売し収益をあげるビジネスの可能性が生まれている。これまでのモノづくりの流れは、作り手・売り手である企業を起点として、商品をいかに大量に効率よく消費者に届けるか、という観点から構築されてきた。しかし、新しいこのモデルでは、不特定多数の消費者から「欲しいもの」についてのアイデアを集め、市場性があるものを選別し、製造ロットおよび価格を特定したうえで予約を募って商品化を決める、というアプローチをとる。収益性の確立に向けてまだ課題の残るシステムではあるが、すでにいくつかの成功事例が生まれつつある。このモデルの先駆的なケースとして、家電を中心とする DTO(Design-to-Order)サイト「空想生活」を運営するエレファントデザインと、マニア向けの雑貨の商品化が中心の「たのみこむ」を運営するエンジンの2社を取り上げる。
●連載:経営学のイノベーション
 金井壽宏・高橋 潔 「元気の出る経営行動科学(4)変革の時代におけるリーダーシップの求心力」
 加賀谷哲之・伊藤邦雄 「企業価値経営論(4)」
●連載:産業レポート
 青柳 正 「移動体通信」
●コラム連載:知のモノローグ
 野中郁次郎 「スピードの経営を補完する「忍耐」と「型」の重要性」
●マネジメント・フォーラム
 三枝 匡((株)ミスミ代表取締役社長:
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「今こそプロフェッショナルとしての経営人材の育成を」
●用語解説
 小川英治 「金融リスク」
< span style="color: #661400; font-size: small;">●投稿論文
 江島由裕 「創造的中小企業支援政策の評価」

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