軽部大教授の共著論文が、日本経営学会第97回大会にて2022年度日本経営学会賞(論文部門)を受賞しました。
受賞者
内田大輔
(慶應義塾大学商学部 准教授)
(慶應義塾大学商学部 准教授)
芦澤美智子
(慶應義塾大学ビジネス・スクール 准教授)
軽部大
(一橋大学イノベーション研究センター 教授)
(慶應義塾大学ビジネス・スクール 准教授)
軽部大
(一橋大学イノベーション研究センター 教授)
研究成果
「アクセラレーターによるスタートアップの育成:日本のアクセラレータープログラムに関する実証分析」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/keieijournal/50/0/50_59/_article/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/keieijournal/50/0/50_59/_article/-char/ja
要旨
新規創業を通じた事業創造は,既存企業による事業創造と並んで,経済発展の原動力である.その点で,新規創業の担い手であるスタートアップの育成は,経済の活性化において欠かせない.日本では,2010年代初頭以降,スタートアップの育成に多くの関心が寄せられるようになった.その中でも特徴的な変化の一つが,2000年代に米国で生まれたアクセラレータープログラムが日本にも生まれ,多面的にスタートアップを支援していることである.アクセラレーターに対する関心が高まる中,アクセラレーターに関する研究が近年になり蓄積されつつあるものの,これまでの研究において,アクセラレーターがスタートアップに与える影響に関して統一的な見解は得られていない.こうした見解の不一致は,一括りにアクセラレーターといっても,その特性ごとに異なる影響をスタートアップに与えている可能性を示唆している.実際に,近年の研究では,アクセラレーターは組織設計や運営方法といった様々な次元において同質的というよりはむしろ異質的であることが指摘されている.本稿では,特性の一つとしてアクセラレーターの経験に注目し,組織学習の観点からアクセラレーターの経験がスタートアップの育成において果たす役割について検討した.具体的には,日本のアクセラレーター38社のデータを用いた実証分析を通じて,アクセラレーターの経験は,十分な資金調達に至っていない初期のスタートアップを支援する場合にのみ,スタートアップの資金調達に資することを明らかにした.初期のスタートアップは,多くの経営課題に直面しておりその育成には困難を伴うが,そのような困難を伴う育成においてこそ,アクセラレーターの経験が活かされる可能性が示唆される.この結果は,アクセラレーターの経験が制度化され,プログラムの質が高まるといっても,そのプログラムが必ずしもあらゆるステージのスタートアップにとって有効なわけではなく,特定のステージのスタートアップに特化したプログラムが形成されている可能性を示唆している.本稿は,筆者が知る限り,日本のアクセラレーターを体系的に分析した初めての論文であり,組織学習の観点からアクセラレーターの経験がスタートアップの育成において果たす役割を明らかにしたという点で,既存研究に貢献することができ,将来の研究の橋渡しとなると思われる.
新規創業を通じた事業創造は,既存企業による事業創造と並んで,経済発展の原動力である.その点で,新規創業の担い手であるスタートアップの育成は,経済の活性化において欠かせない.日本では,2010年代初頭以降,スタートアップの育成に多くの関心が寄せられるようになった.その中でも特徴的な変化の一つが,2000年代に米国で生まれたアクセラレータープログラムが日本にも生まれ,多面的にスタートアップを支援していることである.アクセラレーターに対する関心が高まる中,アクセラレーターに関する研究が近年になり蓄積されつつあるものの,これまでの研究において,アクセラレーターがスタートアップに与える影響に関して統一的な見解は得られていない.こうした見解の不一致は,一括りにアクセラレーターといっても,その特性ごとに異なる影響をスタートアップに与えている可能性を示唆している.実際に,近年の研究では,アクセラレーターは組織設計や運営方法といった様々な次元において同質的というよりはむしろ異質的であることが指摘されている.本稿では,特性の一つとしてアクセラレーターの経験に注目し,組織学習の観点からアクセラレーターの経験がスタートアップの育成において果たす役割について検討した.具体的には,日本のアクセラレーター38社のデータを用いた実証分析を通じて,アクセラレーターの経験は,十分な資金調達に至っていない初期のスタートアップを支援する場合にのみ,スタートアップの資金調達に資することを明らかにした.初期のスタートアップは,多くの経営課題に直面しておりその育成には困難を伴うが,そのような困難を伴う育成においてこそ,アクセラレーターの経験が活かされる可能性が示唆される.この結果は,アクセラレーターの経験が制度化され,プログラムの質が高まるといっても,そのプログラムが必ずしもあらゆるステージのスタートアップにとって有効なわけではなく,特定のステージのスタートアップに特化したプログラムが形成されている可能性を示唆している.本稿は,筆者が知る限り,日本のアクセラレーターを体系的に分析した初めての論文であり,組織学習の観点からアクセラレーターの経験がスタートアップの育成において果たす役割を明らかにしたという点で,既存研究に貢献することができ,将来の研究の橋渡しとなると思われる.
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