2010年度 Vol.58-No.1

2010年度<VOL.58 NO.1> 特集:グリーン・イノベーション 

12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2010年度<VOL.58 NO.1>
特集:グリーン・イノベーション現在、CO2排出量削減をめぐってさまざまな議論が続いている。特に、鳩山由紀夫首相が「1990年比25%削減」を国際公約として発表したため、その可否をめぐって活発な議論が戦わされている。地球温暖化防止は、人類にとって、もはや「待ったなし」の重要課題である。それを達成するためには、何らかの環境保全型のイノベーション(グリーン・イノベーション)を実現するしか方法がない。本特集では、グリーン・イノベーションについて、メッセージ性の高い議論を発信している論者が一堂に会して、それぞれの持論を展開する。
小宮山 宏(株式会社三菱総合研究所 理事長) 課題先進国「日本」が果たすべき役割
 
  CO2の25%削減は、日本にとってチャンスであり、逆に、ここで遅れたら日本は衰退する。日本のとるべき戦略は明確だ。「ものづくり」でよいものをつくり、これらを使って「日々のくらし」におけるエネルギー消費を削減していくことだ。「日々のくらし」のなかで、家庭やオフィスでのエネルギー消費はいくらでも削減できる。これによって、省エネ、創エネの先端機器やサービスの購入が促進され、「ものづくり」のマーケットが育ち、雇用が創出され、21世紀の世界が必要とする新産業が日本から生み出される。まさに「創造型需要」をつくり出すことによって、日本が再生するのである。
金子祥三(東京大学生産技術研究所特任教授) 温室効果ガス削減:真水対策で日本のイノベーション実現を
  地球温暖化防止の交渉は、各国が権謀術数を駆使してぶつかりあう場であることを忘れてはならない。良心的で純粋な気持ちだけでは勝ち抜けない。お人好しはスケープゴートにされる。諸外国の最大の関心事は、日本の資金がどれだけ回ってくるかにあるといっても過言ではない。今、日本に必要なことは、CO2削減への寄与が不確かな排出権取引で海外に国富を流出させるのではなく、国内での有効な削減対策、すなわち「真水対策」である。真水対策とは、海外との排出権取引等を行わない、国内のみで行う策だ。これを、日本を再生させる起死回生の出発点とすべきだ。本稿では、真水対策の具体策と、それを確実に実行するための支援システムの構築について、データと実証に基づいて総合的に論じる。
橘川武郎(一橋大学大学院商学研究科教授) CO2排出量25%削減を本気で実行する方法:グリーン・イノベーションをめぐる社会的構図
  COP主導の国別アプローチでは、地球全体のCO2排出量削減にはつながらない。CO2排出量25%削減を本気で実行するためには、「キャップ・アンド・トレード」と組み合わせる形で、「セクター別アプローチ」を採用すべきである。それによって、日本の技術を使って海外でCO2排出量を削減することが可能になる。日本は、地球温暖化をストップさせる上で、国際的に主導的な役割を果たしうる。地球を救うためには、世界のどこかにCO2排出量削減技術の国際的センターが存在する必要がある。日本は現在、まさにそのポジションにいる。日本のCO2排出量削減技術は、人類全体にとっての共通資産である。今こそ、その効能を発揮することが求められている。
飯田哲也(環境エネルギー政策研究所 所長) 環境エネルギー政策イノベーションの必要性
  再生可能エネルギーを軸とするグリーンテック革命が、世界中で本格化している。先行してきた北欧やドイツはもちろん、アメリカ、そして中国、インド、ブラジルといった新興大国でも、目を見張るような変化が起きつつある。日本は、こうした動きから完全に取り残されている。「最大の失敗」は、古いエネルギー政策に固執して、分散型・再生可能エネルギーを軸とするエネルギーへの転換が遅れたことにある。再生可能エネルギーは、日本の政策ではこれまでほとんど無視されてきた。世界的な再生可能エネルギー政策や市場でも、日本の存在感はほとんどない。本稿では、エネルギー転換の遅れに至った日本の道のりを振り返り、今後、日本がグローバルなグリーンテック競争に、いかに復帰できるのかを論じる。
島本 実(一橋大学大学院商学研究科准教授) 太陽光発電の半世紀:産官学による技術開発と市場開拓の挑戦
  脚光を浴びつつある太陽光発電だが、その研究開発や実用化努力は、決して近年始まったものではない。シャープは半世紀以上、京セラ、三洋電機も約35年の長きにわたってこの事業に取り組んできたのである。また、政府も第1次石油危機を契機に、産官学協同で技術開発・市場開拓を進めてきた。その結果、技術開発における企業間競争と性能向上、市場開拓における系統連係や補助金政策が功を奏し、日本の太陽光発電は1990年代に生産量で世界一の座についたのである。しかし2000年代半ばからの急速な世界市場拡大のなかで、日本企業はその地位を急速に他国の新興企業に奪われている。日本が今後、世界一の地位を回復するためには何が必要なのか。産官学による好循環のダイナミズムが始まるかどうかが、成否のカギとなる。
●ビジネス・ケース
西村孝史(徳島大学総合科学部准教授)
ローソン:「お店」としてのコンビニから「企業」としてのコンビニへ
  2002年5月にローソンの社長となった新浪剛史は、矢継ぎ早に事業改革に乗り出す。就任当時の新浪社長に同社はどのように見えていたのか。また同社の置かれた競争環境はいかなるものであったのか。「おにぎり屋」というブランドを通じた基幹商品の開発、ナチュラルローソンやローソンストア100、ローソンプラスなど従来の青色のローソン以外での進出や、さまざまな業態との提携を成功させるには同社で働く従業員の意識改革と組織改革が欠かせない。社長就任から8年が経過した現在、組織変革プロセスを新浪と従業員の発言を交えて検討する。
●ビジネス・ケース
鈴木 修(関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科准教授)
デンソーウェーブ:QRコードの開発・事業化
  今や身の回りをはじめ、至る所で目にするようになったQRコード。携帯電話でURLを読み取ったり、オリジナルのコードを作成したりと、一般の人でも簡単に利用できる二次元コードだ。その源流は、自動車の生産管理の効率化をめざしたバーコードと、その読み取り機(リーダー)開発にあった。従来のバーコードに比べ、記録容量や読み取り速度の飛躍的な増大を実現したQRコードは、どのように生み出されたのだろうか。本ケースでは、自動認識技術の蓄積に焦点をあわせながら、デンソーによるQRコードの開発、および事業化の過程を明らかにする。
●技術経営のリーダーたち(7)
 松沢幸一(キリンビール株式会社 代表取締役社長)
 「何か役に立つことがしたかった 本業のなかに見出した自己実現の細い道」
●コラム連載:「人勢」議論(2)
 金井壽宏 「やる気、元気の自己調整にも、土台というものが要る」
●私のこの一冊
 軽部 大 「ビジネス書の神話と現実:フィル・ローゼンツワイグ『なぜビジネス書は間違うのか』」
●マネジメント・フォーラム
 福武總一郎(株式会社SIM-Drive 取締役会長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「オープンソースのビジネスモデルで 世界で最も優れた電気自動車の技術の普及をめざします」
●用語解説
 朴 宰佑 「感覚マーケティング」

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