2004年度 Vol.52-No.1

2004年度<VOL.52 NO.1> 特集:デジタル・コンペティション 

12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2004年度<VOL.52 NO.1>
特集:デジタル・コンペティションデジタル、ITブームの浮き沈みを経験しているが、デジタル技術の革新はとどまるところを知らない。デジタル化された情報をより迅速に、より大量に、より安く、処理・蓄積・伝達する情報通信技術は、社会の隅々にまで広がり、新しい製品やサービスを生み出し、ビジネスの仕組みや業界の構造を変えていく。そうした「デジタル・コンペティション」の時代に、企業はどのように立ち向かえばよいのだろうか。そこでの勝者の条件とは何なのか。デジタル技術革新時代における企業競争の特質、動向、課題を具体的な事例をもとに分析する。
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アナベル・ギャワー;マイケル・A・クスマノ(欧州経営大学院助教授;マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院教授) プラットフォーム・リーダーに必要とされるものは何か--パーム、NTTドコモの挑戦と課題
  プラットフォーム・リーダーシップとは、自社の特定のプラットフォームのために、補完製品メーカーなど業界の様々なレベルでのイノベーションを促す能力を指す。パソコンの世界ではインテルとマイクロソフトが、それぞれハードウエアとソフトウエアの領域でプラットフォーム・リーダーの地位を確立したが、新たなプラットフォームをめぐる戦いは今も続いている。企業がプラットフォーム・リーダーになることを可能にする力とは何か。その地位を強固なものにするには、どのような戦略的行動をとればよいのか。本稿ではパームとNTTドコモという最近の例を取り上げつつ、デジタル技術の世界におけるプラットフォーム・リーダーシップの考え方を紹介する。
スタンリー・J・リボウィッツ(テキサス大学ダラス校経営学部教授) インターネットバブルの原因とその教訓
  インターネットバブルの時代、その熱狂に酔いしれた人々は、ビジネス戦略上のルールがすべて書き換えられようとしているという錯覚を抱いた。「ネットワーク効果」や「勝者がすべてを獲得する」といった概念をもとに、「ロックイン」や「先行者は勝利する」という飛躍した概念が作りあげられ、それが新しい時代のビジネス戦略の要諦としてまことしやかに吹聴されたことこそが、大いなる誤りだった。こうした「ニューエコノミー」的な経済概念の本質を再考しつつ、インターネットバブルがどのように生み出され、その崩壊から学ぶべき教訓は何かをいま改めて考える。
國領二郎
(慶應義塾大学環境情報学部教授)
リアルとバーチャルの結合--電子タグがもたらす「つながり」の社会的な意味
  生産者や企業から消費者に至るまでのモノの動きをインターネットを介してリアルタイムで追跡・管理する新技術として電子タグが注目を集めている。技術的にはまだ進化の途上であり、プライバシー侵害の問題など乗り越えるべきハードルもあるが、インターネット上のバーチャルな世界とリアルなモノの世界を結合させる可能性を秘めた技術といえる。電子タグのもたらす「つなぐ」という機能・現象の意味を考えつつ、変化し続けるビジネスや社会と情報技術の関係について論じる。
西口敏宏
(一橋大学イノベーション研究センター教授)
ネットセントリック戦略
  ネットセントリックとは、意思決定や活動の「中心」が、特定の1点ではなくネットワークそのものにあるとする新しい考え方である。情報テクノロジーの発達と密接な関係を持つこの概念は、軍事行動の様式から、企業や国家戦略再編の鍵を握るものとして各方面から注目を集めている。本稿では、最先端のネットワーク研究の成果を交えつつネットセントリック戦略のコンセプトを紹介するとともに、従来の製品(兵器)に与える影響を考え、その現代的意義や、経営戦略を含む幅広いインプリケーションを論じる。
ジェフリー・L・ファンク
(一橋大学イノベーション研究センター教授)
モバイル先進国日本の技術を活かす
  モバイルインターネットは、パソコン(PC)ベースのインターネットに並び、これからの産業構造を大きく変える要素を秘めた重要な技術分野である。国内での携帯電話の急速な普及と、その周辺の技術革新や新サービス開発競争のなかで力をつけた日本企業は、世界市場においても競合他社をリードする可能性を持つ。ただ、PCやLANにおいての経験が物語るように、この市場での成功の鍵となるのは、サービスやコンテンツに関する個々の技術だけではなく、様々な企業のコンポーネント同士がシステムとしてどう協働するかを決める「プラットフォーム」の構築・推進力である。日本企業がモバイルインターネットの「勝者」となるための条件と戦略を考える。
武石 彰
(一橋大学イノベーション研究センター教授)
デジタル技術革新と音楽ビジネスのゆくえ--技術、ビジネス、音楽をめぐるダイナミクス
  レコード業界はここ数年、世界的な販売不振により苦境にあえいでいる。その背景にはCDレコードの違法コピー、音楽ファイルの違法配信・共有など、デジタル技術革新がもたらす影響があるといわれる。ただ、技術革新によって音楽ビジネスが危機に直面し、変容を迫られるのは今に始まったことではない。レコードの発明以来、ラジオ、磁気テープ、テレビ、LPレコードといった新技術が生み出され、普及するごとに、音楽ビジネスの産業構造は変化し、 合従連衡や主役企業の交代を繰り返し、そして新しいスタイル、ジャンルの音楽が登場してきた。本稿では、主にポピュラー音楽業界を中心にこの変化のパターンを探りつつ、現在進行中のインターネット音楽配信ビジネスの動向を追い、音楽ビジネスなおけるデジタル技術革新のゆくえを考える。
●ビジネス・ケース
山下裕子(ランコム);北村真琴(メイベリン ニューヨーク)
(一橋大学大学院商学研究科助教授;一橋大学大学院商学研究科博士後期課程)
ロレアル:世界最大の化粧品企業のブランド・マネジメント ランコム/メイベリン ニューヨーク
  フランスに本拠を置くロレアルは、世界最大の化粧品メーカーである。 1907年にヘアダイ製品の工業生産からスタートした同社の発展は、数々のブランドを合併・買収し、それを世界的市場において効果的にマネジメントする能力によってもたらされてきた。化粧品では世界第2の市場規模を持つといわれる日本においても、日本法人の日本ロレアルを通じて、多数の強力なブランドを展開し高成長を続けている。ここでは、高級化粧品ブランドの「ランコム」、マス・マーケット向けブランドの「メイベリン ニューヨーク」という2つの主力ブランドをとりあげ、日本市場を中心とした同社のブランド・マネジメントの特徴を考える。
伊東幸子;青島矢一
(一橋大学大学院商学研究科修士課程;一橋大学イノベーション研究センター助教授)
ハウス食品:玉葱催涙因子合成酵素の発見と研究成果の事業化
  ハウス食品は、玉葱を切ったすり潰したりしたときに涙を誘発する成分の原因となる酵素を発見し、世界的な注目を集めている。基礎研究レベルの成果としては、会社創業以来初めてともいえる快挙であり、以後、「涙の出ない玉葱」の商品化や他分野への応用を検討している。ただ、本格的な事業化にあたっては、長期間にわたる多大な投資を必要とするうえ、遺伝子組換え技術が利用される可能性が高い。即席カレールウなどの家庭用加工食品の製造販売を主力事業とする同社にとって、新分野への取り組みは、既存事業に影響を与えかねない。この世界レベルの技術シーズを会社の将来にどう活かすのか、ハウス食品の直面する難しい戦略的課題を考える。
●連載:経営学のイノベーション
 蜂谷豊彦/中野 誠 「戦略ファイナンスへの招待(6):企業価値創造のマネジメント」
●連載:ブランディング・イン・チャイナ:中国消費市場におけるマーケティング戦略(2)
 松井 剛 「清涼飲料:現地化と標準化のはざまで」
●コラム連載:戦略思考の技術(1)
 沼上 幹 「戦略のための思考法」
●マネジメント・フォーラム
 三木谷浩史(楽天株式会社代表取締役会長兼社長):インタビュアー・米倉誠一郎
 「仮説・検証・仕組み化で「次なる一手」を打ち続けます」
●投稿論文
 「革新的産業における先行者の優位性と追随者の優位性--家電業界の実証分析」 
 長 広美;小田切宏之
●用語解説
 谷本寛治 「企業の社会的責任(CSR)」

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