【一橋ビジネスレビュー】 2019年度 Vol.67-No.4

2019年度<VOL.67 NO.4> 特集:TOKYO―ポスト2020の未来展望

 

12・3・6・9月(年4回)刊編集

 

一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

特集:20世紀後半の世界経済を牽引してきた日本の首都、TOKYO。一世を風靡したときの輝きを取り戻すべく、2020年に2回目の「オリンピック・パラリンピック」を開催する。しかし、「ポストオリパラ」のTOKYOのイメージは不透明だ。経済大国でも政治大国でも、ましてや軍事大国でもない日本の顔「TOKYO」はどんな未来に向かおうとしているのだろうか。TOKYOを斬新な切り口から展望しようというのが、本特集のねらいである。


特集論文Ⅰ 第4次産業革命と「スーパーシティ」
竹中平蔵
(東洋大学国際学部教授)
ビッグデータ、人工知能(AI)、自動運転、IoT、量子コンピューターなどの新技術に代表される第4次産業革命が到来している。この革命により、21世紀の街づくりも一変しようとしている。単に効率がよく高い生産性に基づいた都市が出現するだけでなく、個々の技術の部分最適を超えた全体最適が追求された持続可能性の高い「スーパーシティ」の実現も可能としている。本論文では、長く政策立案に携わった著者が、スーパーシティ構想の国際比較と、規制緩和を中心にしたこれまでの政策の歩みをたどりつつ、国際的に後れを取った日本と東京の可能性に対して、早期実現への道を説いたものである。

特集論文Ⅱ 「創造性」の獲得をめぐる世界規模の都市間競争
岡田智博
 (一般社団法人クリエイティブクラスター 代表)
イノベーションの源泉である「創造性」の獲得をめぐって今、世界規模での都市間競争が起きている。ITの発展と爆発的な普及は、創造産業という新たな成長分野を創出、その影響力はITサービスや地域資源の産業的再生など周辺分野にも大きなインパクトをもたらしている。近年、IT分野を中心に、ユーザー中心のニーズの喚起に基づいた新たな「モノ」「コト」の開発と拡散によるイノベーションが求められるなか、これらをつくり、かつ、広げていくための「創造性」は、欠かすことのできない資源となっている。本論文は、都市においてイノベーションを誘発し、成長させるために欠かすことのできない「創造性」がいかに新たな価値を都市にもたらし、どのように獲得されてきたのかを解き明かすものである。

特集論文Ⅲ 世界オンリーワン都市への道
杉山知之
 ( デジタルハリウッド大学学長)
東京は、漫画やアニメ、ゲーム、デジタルコンテンツをはじめ、ものづくりへのこだわりと、最新のテクノロジーを取り込んで、おびただしい数の作品を続々と生み出す「高度情報工芸文化都市」である。たとえば、世界の若者に多くの影響を与えてきたテレビアニメは、国家の誇るべき文化資源でもある。著者は、四半世紀前にデジタルハリウッド大学を開学し、まさにデジタルコンテンツ制作・教育の最前線で活躍してきた。同大学は、学生の3分の1以上が日本のコンテンツに憧れてやってきた留学生であり、今後の東京の未来を先取りしているといえる。本稿は、そうした著者が2度目のオリンピックを迎えるにあたっての、60年余りの同世代史としての東京の変遷と抱える課題、そして、世界中から若者が集まり、オンリーワン都市となる未来像を描いたものである。

特集論文Ⅳ 「本郷バレー」はなぜ生まれたか――大学発ベンチャー集積の理由
吉岡(小林) 徹/丸山裕貴/平井祐理/渡部俊也
(一橋大学イノベーション研究センター講師/
 東京大学未来ビジョン研究センター受託研究員/
 東京大学未来ビジョン研究センター特任助教/
 東京大学未来ビジョン研究センター教授

従来、日本のソフトウェア分野のスタートアップは渋谷・六本木を中心に集積していたが、近年は、AI系スタートアップの集積が本郷3丁目周辺に見られている。起業家OBとの交流によって学生発ベンチャーが立ち上がる本郷エリアには、スタートアップのエコシステムが出来上がりつつある。しかし、これは単に学生が優秀だからというだけでは説明がつかないものがある。スタートアップに人材を供給する東京大学の学生は本来保守的で、スタートアップは進路選択の対象ではなかったからである。この背景には、20年近くに及ぶ東京大学内部、そして起業家OBたちによる半ば草の根のスタートアップ支援活動と、それを支えた、大学内部のイントラプレナーシップが存在する。本論文は、これらの歴史的経緯を記述し、これからの東京がスタートアップの集積地として発展していくために忘れてはならない視点を提示する。

特集論文Ⅴ 機能としての脱オリンピック――創発都市と「パビリオン・トウキョウ2020」
米倉誠一郎/和多利浩一/和多利恵津子
(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授、一橋大学名誉教授/
 ワタリウム美術館 CEO/
 ワタリウム美術館 館長

オリンピックには、2つの機能がある。中進国から先進国へのステップアップを示す国威発揚型のオリンピック、もう1つが、成熟・衰退過程にある都市を再構築する文化再生型のオリンピックである。私たちは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで何をめざし、どのように都市の魅力を内外に発信するのであろうか。本論文の執筆者が主宰するワタリウム美術館は、日本を代表する建築家と現代アーティストによる7つのパビリオンからなる「パビリオン・トウキョウ2020」での都市のリバイタリゼーションを提唱する。本論文では、1964年の東京オリンピックからの歴史を振り返り、各パビリオンの構想を紹介する。そして、クレイジーなアイディアこそが都市の創発性を呼び込むのに不可欠であることを説き明かす。

特集論文Ⅵ 東京変革に必要な「外圧」としての地方戦略
木下 斉
(一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事
東京の実態は、経済成長率が全国平均を下回る「成長しない大都市」である。国際的には、先進国、新興国との都市間競争で伸び悩んでいる。このままでは、東京の財源に頼る地方もまた共倒れになり、日本全体の衰退を招いてしまう可能性がある。なぜそうなるのか。それは国内における東京一強という構造に東京が甘んじているからだ。逆説的だが、未来の東京には、好敵手となる国内における競合となりうる地方都市の繁栄という「外圧」が必要である。かつて東京と大阪が競っていた時代には、東京も大阪も都市に関するイノベーションを常に追求していた。東京は外圧により楽観論を捨て、より明瞭な対抗都市の形成という戦略を持つべきである。本稿では、全国各地で経営とまちづくりに取り組み、事業支援や人材育成の最前線で活躍してきた著者が、リアルな数字と歴史をたどりながら、ポスト2020の東京再生への途を説き明かす。

[特別寄稿]ヒューマナイジング・ストラテジー――人間中心の物語りアプローチ
野中郁次郎
(一橋大学名誉教授
著者は四半世紀前に出版した竹内弘高との共著『知識創造企業』において、暗黙知と形式知との螺旋運動から生まれる組織的な知識創造プロセスこそがイノベーションを説明し、競争優位の源泉となることを主張した。2019年に続編として刊行された『ワイズカンパニー』では、共通善に向かって、集合的な知識創造の拡大再生産を促進し、持続的成長を実現するリーダーシップとは何かを明らかにした。ワイズリーダーが構想し、実践する人間中心の戦略論が「ヒューマナイジング・ストラテジー」である。既存の経済学ベースの理論は、過去の出来事を分析・説明するために有効であったが、意味創造の主体としての人間観が欠落しているために、組織的イノベーションのダイナミクスが説明できない。本論文では、そうした分析的戦略の限界を克服し、直観力を引き出す共感を起点にして、人間の生き方を問う「物語りアプローチ」を企業事例とともに提言する。

[連載]産業変革の起業家たち
[第2回]京大発ベンチャーが仕掛ける次世代半導体材料のイノベーション
人羅俊実
(株式会社FLOSFIA 代表取締役社長)
インタビュアー:青島矢一/藤原雅俊

[連載]全員経営のブランドマネジメント
[第5回]全員経営のブランドマネジメントの実践
鈴木智子
(一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻准教授)
 
[連載]日本発の国際標準化 戦いの現場から
[第9回]大型インバーター――認証システムの構築支援
江藤 学/鷲田祐一
(一橋大学イノベーション研究センター教授/
 一橋大学大学院経営管理研究科教授)
 
 
[ビジネス・ケース]
Francfranc――雑貨と家具を通じたインテリアの提案
松井 剛
(一橋大学大学院経営管理研究科教授
1992年に誕生したインテリアショップであるFrancfrancは、家具だけでなく、雑貨なども含めてトータルな視点からライフスタイルを提案するホームファニシング業態の先駆者である。同社は、若い女性を中心に支持を集め、海外を含む多店舗展開と多様なフォーマットを開発し、大型チェーンへと発展を遂げてきた。四半世紀を超える歴史のなかで、常に重視されてきたのが、「Francfrancらしさ」というブランドアイデンティティーである。本ケースでは、創業から今日に至る同社の試行錯誤と成長のプロセスとともに、製品開発とブランディングの取り組みをたどっていく。

新中野工業――酒造業界へのプラットフォーム構築
遠藤貴宏
(一橋大学大学院経営管理研究科准教授
日本酒の世界では、酒造用原料米を精米することを「磨く」という。磨きには夜を徹して精米機の動きを見守る作業が不可欠であったため、それほど一般的なものではなかった。しかし、1980年代後半以降、全自動の酒米精米機が普及し、磨きを売りにした吟醸酒や大吟醸酒が全国的に流通するようになっていった。ところが1990年代以降、酒造業界は低迷期に突入し、酒米精米機の製造・販売を行っていた新中野工業も厳しい環境に置かれる。そこで、2000年代半ばに同社は、自社の精米機を活用した高付加価値の精米サービスへとビジネスの軸を移した。本ケースは、新中野工業の組織変革のプロセスと、現在、同社が日本の酒造りの品質向上をめざして行っている、さまざまな取り組みについて紹介する。

[ポーター賞]
第19回 ポーター賞受賞企業・事業に学ぶ
大薗恵美
(一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻教授)

[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー:米倉誠一郎
オリンピック後の東京は可能性に満ちている
隈 研吾
(隈研吾建築都市設計事務所 主宰

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